ベクトル

氷のように冷たくありたい
融けてなくなってしまえるから
炎のように熱いのもいい
跡形もなく燃え尽きられる


背に翼が生えたなら
大空を駆け巡るんだろう
手に水掻きがついたなら
大海原を渡るんだろう


ないものねだりを繰り返し
異形の者に憧れて
瞼をおろしたその眼で
いったい何を見るというのだ


陽はまたのぼり朝になり
数多の命が宿るなかで
もがく己を嘲りながら
ため息だけを生み出していく